福岡の不動産事情~天神ビッグバンの始まり~

九州最大の繁華街、福岡市・天神地区で、商業施設の閉店ラッシュが始まり、数年後には、これまでなかった高さ100m級のビルが登場します。これを可能にした福岡市の再開発促進事業「天神ビッグバン」計画は、私たちの目の前に一体、どのようなまちを出現させるのでしょう。

天神コア、イムズ、天神ビル、福岡ビル…天神地区でビルの建て替えや商業施設閉店のニュースが相次いでいます。老朽化したビルの建て替えに伴うものですが、ここにきて急に動き出した背景には、福岡市の再開発促進事業「天神ビッグバン」計画があります。
天神地区を再開発し、アジアで最も創造的なビジネス街を目指す動きは早くからありましたが、都心部再開発のネックの1つにビルの容積率がありました。1973年の都市計画法改正で、福岡市の場合、都心部における容積率は400~800%に指定されていました。それ以前に完成し更新期を迎えたビルが多くありましたが、容積率の規定がこれを阻みました。交通渋滞など都市の弊害や来街者の減少なども見受けられ、危機感を抱いた天神明治通り地区の地権者11者は2008年6月、「天神明治通り街づくり協議会」(MDC)を立ち上げ、福岡市に対して機能更新における計画を提案をしました。
対象エリアは、東は那珂川畔から西は天神西通りまでの約700mの区間、南北は明治通りを中心にそれぞれ概ね1街区(約80m)の幅を持つ約17haのエリアです。同地区には、約100棟のビルが立ち並びますが、約半数が築40年を超えて更新期にあたり、大きな転換期を迎えていました。

そこで福岡市は2008年8月、「福岡市都心部機能更新誘導方策」を策定し、容積率超過建築物の円滑な建て替え促進を始めました。新たに導入された「まちづくり取組み評価」では、「九州・アジア」「環境」「魅力」「安全安心」「共働」の5つのテーマを評価項目に設定し、貢献度に応じて最大400%の容積率を緩和できる画期的な試みです
また、2012年1月、福岡市は「特定都市再生緊急整備地域」(特定整備地域)に選定され、官民協議会による計画作成、財政支援、手続きのワンストップ化、都市計画決定の迅速化が可能となりました。その後、航空法による高さ制限の緩和特例なども導入。
それらにより、2015年2月、福岡市はアジアの拠点都市としての役割・機能を高め、新たな空間と雇用を創出するプロジェクト「天神ビッグバン」に取り組むと発表しました。容積率緩和を独自政策として実施、都市機能の大幅な向上と増床を図るとともに、雇用創出に対する立地交付金制度の活用や創業支援、本社機能誘致などハード・ソフト両面からの施策を組み合わせて推進する方針です。
対象エリアは天神交差点から半径約500m、天神明治通り地区を含む約80haで、2024年12月末日までに竣工予定のビルが対象。魅了あるデザイン性に優れたビルには既存の容積率特例制度に加えてさらに最大50%拡大されます。
これにより向こう10年間で30棟の民間ビルの建て替えを誘導し、その延床面積は約1.7倍(44万4000㎡→75万7000㎡)、雇用者数は約2.4倍(3万9900人→9万7100人)、建て替え完了後から新たに毎年約8500億円の経済波及効果を見込んでいます。

第1号として2017年1月には、天神ビジネスセンタープロジェクトが始動しました
これによって付加価値の高いビルへの建て替えなどがスピード感をもって進み、ビジネスやショッピング・憩いをはじめ、人・モノ・コトが交流する新たな空間を生みだそうとしています。しかも、航空法の高さ制限で高さ100m級の高層ビル建設はムリだと言われていた天神地区に、100mを超えるビルもお目見えします。既存のビルの高さの2倍程度のビルが立ち並ぶと、天神の風景はまさに様変わりするでしょう。

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